極薄のりん青銅を生み出す技術

スリット入社7年
所属部署:製造課 スリット・トラバースチーム

ミクロンの世界で戦う製造業

私が製造業に興味を持ったきっかけは、学生時代のインターンシップです。インターンシップは当社ではなく、同業他社でさせていただいたのですが、その時にこういう業界もあるんだなと興味をもちました。学生時代、卒業研究の分野も金属系で、合金の特性を調べることをしており、その関係もあったのか、学校の担任教師から原田伸銅所を就職先に勧められました。
入社前は設備保全の部署に配属されるものだと思っていたのですが、実際に配属されたのはスリット加工のチームで驚きました。スリット加工の面白いところは、1mm以下の世界でずっと戦っているようなところだと感じます。製品幅には規格があり、その規格内で狙いからの誤差をだいたい10ミクロン以内に収められるようになりました。また、スリットではどうしてもバリやダレといった板厚よりも厚い部分が出てきてしまい、薄板では数ミクロンでも不良につながってしまいます。今ではそれらが分かるようになり、1ミクロン単位、更にはサブミクロンの世界で戦っていると自負しています。
スリット加工が綺麗に仕上がっていれば、それを梱包する次の工程の担当者はもちろん喜びますし、そのままお客様のところで開けた時に製品が綺麗だとお客様も喜ばれるので、製品はもちろん、それを作っている会社の印象にも関わる部分です。

入社7年目、チームでは若手

新卒で入社した直後は、先輩と一緒に機械を2人で動かしていましたが、そのときは主に補助的な役割でした。入社4年目くらいからようやく1人で機械を扱えるようになりました。今年で7年目になるのですが、それでも100%上手くいくとは限らず、たまに上手くいかないときもあるというのが現状です。
機械を1人で動かすようになったときは、不安で不安でしょうがなかった記憶がありますが、先輩方が「こうすればいいんだよ」と分からないことを丁寧に指導してくれたのでなんとか乗り越えることができました。所属しているスリットチームでは、私は下から2番目に若い方なので、先輩をとても頼りにしている部分はありますが、先輩方は年上だから敬わなければいけないということもなく親しみやすい方たちばかりです。
スリットの失敗というのは、お客様の仕様に現場が応えられなかったときです。もちろん、スリット自体が上手くいかなかったときは、何かしら事情があるのですが、ここまで手間をかけて作ってきたものを無にしてしまい、また溶解するところからやり直しになるので責任重大です。毎月、何十トン、何百トンという計画があり、繁忙期には量が増えるので大変な思いをすることもあるのですが、月の計画を全てこなすことができると達成感が強くやりがいもあります。

極薄のりん青銅を生み出す技術

原田伸銅所が扱っている「りん青銅」は、携帯電話のコネクタやICチップ、自動車関連などさまざまな方面で活用されています。一言でりん青銅といっても、すずの含有率や硬さの違いで40種類近くあります。それに加えて、お客様が欲しい幅や厚みなど、作り込む仕様にも多様性があります。当社のりん青銅は最も薄い製品で厚さ0.05mmの物があります。
こうした製品を作るにあたり、原田伸銅所は自社製品の品質に妥協しない会社だと思います。薄さを追求すればするほどスリット作業も難易度が上がってきます。けれども、とても繊細な製品を扱っているので、こちらとしても技術の面で妥協はできない。それが、極薄0.05mmのりん青銅を生み出す原田伸銅所の仕事の流儀だと思います。
これから社会に出る学生さんたちには、入社した会社の仕事が自分の想像していたものと違ったとしても、慣れてくると楽しくなってくる時期がくると思います。そうなればやりがいも出てくるのでまずは目の前の仕事に実直に取り組んでみてほしいと思います。


※入社年数は取材時のもの

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